HypnoVR | 新たな麻酔技術がCES2019へ出展

 VR技術を用いて催眠状態に入りやすくし、副作用のない麻酔を目指すヘルステック”HypnoVR”が、CES2019へ出展する。

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麻酔を投与された3分の1以上の患者が副作用を訴える

 現代社会で、全く麻酔のお世話にならない人はそういない。虫歯の治療から手術の時まで、神経を寝かせておく麻酔技術は頻繁に使われ、われわれの痛みを和らげてくれる。

 だが実のところ、その莫大な利点の反面、麻酔薬には副作用が存在する。フランスでの調査では、医療処置中に麻酔を投与された患者の3分の1以上が、何らかの副作用や合併症に苦しんでいる。それは喉の渇きや嘔吐、気分の悪さといった短期的なものから、アレルギー、心臓・呼吸器系への悪影響など、長期に渡るものもある。フランスでは毎年1200万人が麻酔を投与されていることもあり、これらの副作用は無視できないリスクとなっている。

言葉による暗示で鎮痛する医療催眠(hypno therapy)

 こうした現状の中、HypnoVRは「医療催眠 (Hypno therapy)」に注目した。医療催眠とは、言葉による誘導で気分や肉体をリラックスさせることで、痛みを低減する技術だ。催眠というと非科学的な・怪しい響きを感じる人もいるだろうが、近年では科学的検討が進み、1995年にはNIH(National Institutes of Health: 米国立衛生研究所)が慢性疼痛に対する催眠療法の効果を認めた。

 脳画像研究の進展により、催眠状態に入っている時には実際に脳活動が変化しており、鎮痛やストレスへの対処に効果があるとする報告もあらわれている。だが、催眠のかかりやすさには個人差がある。催眠状態に入れるかどうかは、どれだけ催眠の暗示に没入できるかなどにも影響を受ける可能性があり、効率的な医療催眠の手法が模索されていた。

医療催眠をVRで加速するHypnoVRは、副作用のない「新たな麻酔薬」を目指す

 麻酔薬の副作用の現状と、医療催眠の技術に着目したのが、CES 2019に出展する”HypnoVR“だ。HypnoVRは、VR技術がもたらす没入感を利用し、医療催眠をより効率よく提供するデバイスを開発した。この技術により、副作用の少ない医療催眠で麻酔と同等の効果を与えることを目指している。技術自体はVRだが、その効果を考えると広義のHelath Tech(ヘルステック)であるともいえるだろう。

 HypnoVRが提供する利点は他にもある。手術につきものの不安感やストレスなど、心理的な重荷に対しても医療催眠は効果があるという。また、大規模な麻酔をVRで一部置き換えることで、治療コストを削減したり、治療プロセスをより最適化するなど、医療者に対してもメリットを強調している。

ディスプレイを被っている間に手術が終わっている新しい麻酔

 HypnoVRは、小児科や歯科、消化器科などにデバイスを導入し、医療レベルでの実証を目指している。実際に仏ストラスブールの歯科医療機関と連携し、医療機関で用いることができる麻酔装置としての効果を検証中だ。

 現状でも、全身麻酔は「寝ている間に終わる」という強力な効果がある。これに加えて、副作用もなく「ディスプレイを見ている間に終わる」麻酔が現れれば、手術や治療という不安感・孤独感を伴う患者に、安心感を与えてくれるだろう。

 このように、CESでは毎年、医療や健康、QoL改善に関わるプロダクトなどが4000以上の参加企業から出展されており、全てを追いかけるのはなかなか難しい。
そこで、例年のCESの動向や投資に関する情報、最新の技術などを知りたい方々には、弊社発行の「CES 脳科学企業レポート」をおすすめしたい。
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